前回は「摂食・嚥下障害」について解説しました。
今回は「意識障害」について解説していきます。
意識障害は脳卒中を発症した際にしばしば出現する症状の一つです。
意識障害を評価する方法についても解説しておりますのでご一読いただけると幸いです。
今回は下記の流れで解説していきます。
意識障害とは
意識障害とは、意識レベル(覚醒度)と認識機能の両方またはいずれか一つが障害された状態のこと。
意識レベル(覚醒度)
意識がどの程度はっきりしているかの度合い。
意識レベルが低下した状態を「意識混濁」といい、軽いものから傾眠・昏迷・半昏睡・昏睡が含まれます。
※一過性に意識レベルが低下する状態を失神と言います。
認識機能
自分自身と周りの認識を行う機能。
認識機能の異常で出現する症状は「意識変容」といい、せん妄・錯乱・もうろう状態などが含まれます。
せん妄:なんらかな要因で、身体的な負荷がかかった際に出現する軽度の意識障害のこと。
※せん妄は認知症と間違えられやすいため、注意が必要です。
意識障害の原因
意識障害の原因は脳の障害以外にも、全身性の代謝異常でも出現します。
- 脳血管疾患(脳卒中・脳症・痙攣重積など)
- アルコールの過剰摂取
- 低血糖
- 尿毒症
- 低酸素血症
- 薬物中毒
- 高体温または低体温
- 精神疾患
- 感染症 など
以上が意識障害を来す原因となります。このように意識障害を来す原因は様々あり、原因の鑑別が必要になってきます。
意識障害の評価
意識障害の評価にはJCS(Japan Coma Scale)やGCS(Glasgow Coma Scale)が主に使用されます。
JCS(Japan Coma Scale)
覚醒度に応じて大きく、Ⅰ(一桁)、Ⅱ(二桁)、Ⅲ(三桁)の三段階に分けられます。
それをさらに3段階に分け、計9段階で評価されます。
※健常者の場合は「0」と表記されます。
Ⅰ(一桁) 刺激しないでも覚醒している状態 | 1 | だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない |
2 | 見当識障害がある | |
3 | 自分の名前、生年月日が言えない | |
Ⅱ(二桁) 刺激すると覚醒する状態 (刺激を止めると眠り込む) | 10 | 普通の呼びかけで容易に開眼する 合目的な運動(例えば「右手を握れ、離せ」など)をするし、言葉も出るが間違いが多い |
20 | 大きな声または体を揺さぶると開眼する 簡単な命令に応じる(例えば離・握手) | |
30 | 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する | |
Ⅲ(三桁) 刺激しても覚醒しない状態 | 100 | 痛み刺激に対し、払い除けるような動作をする |
200 | 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめたりする | |
300 | 痛み刺激に反応しない |
点数を表記する場合は、「Ⅱ-20」や「Ⅲ-300」と表記します。
GCS(Glasgow Coma Scale)
開眼機能(E)、言語機能(V)、運動機能(M)の3つの要素に分けて意識障害を評価します。
開眼機能(E) eye response 点数 | 言語機能(V) verbal response 点数 | 運動機能(M) motor response 点数 |
自発的に 4 | 正確な応答 5 | 命令に従う 6 |
よびかけにより 3 | 混乱した会話 4 | 疼痛刺激を払いのける 5 |
疼痛刺激により 2 | 不適当な会話 3 | 疼痛刺激に対する四肢屈曲、逃避反応 4 |
開眼しない 1 | 理解不明な声 2 | 疼痛刺激に対する四肢異常屈曲(除皮質硬直) 3 |
発語しない 1 | 疼痛刺激に対する四肢伸展(除脳硬直) 2 | |
気管内挿管・切開 T | 全く動かない 1 |
点数を表記する場合は、「10(E2,V3,M5)」のように表記します。
おわりに
今回は「意識障害」について解説しました。
意識障害は脳卒中のみの症状ではありません。アルコールの過剰摂取などさまざまな原因があります。
また、意識障害を評価する指標もあり、病院でもよく使用されている二つをご紹介しました。
GCSは難しく細かい評価となりますが、JCSは比較的簡単に評価することができます。
次回は、「高次脳機能障害」について解説していきます。
高次脳機能障害のうち、「失語症」について以前に解説しましたので気になる方は過去の投稿をご一読ください。