前回は「意識障害」について解説しました。

今回からは高次脳機能障害について解説していきます。

脳卒中を発症した場合、高次脳機能障害が出現する可能性があります。

高次脳機能障害が出現すると、社会復帰等に大きく影響します。

そこで、高次脳機能障害の具体的な症状等について触れていきます。

高次脳機能障害のうち、失語症については以前解説しておりますので今回は割愛させていただきます。

高次脳機能障害の症状は多くあります。なので、数回に分けて解説していこうと思います。

今回の内容は以下になります。

高次脳機能障害とは

脳の障害に伴い出現する、失語、失行、失認、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害をきたしている状態のことです。

脳の障害と書かせていただきましたが、脳卒中以外にも、変性疾患や頭部外傷などでも発症します。

この図は高次脳機能障害が生じる代表的な脳の損傷部位について示したものです。

この損傷部位については、その部位が損傷されると必ず症状が出現するものではありません。他の部位の損傷でも生じることがあります。

また、ここに記載されているものが全てではありません。

今回はここに記載されている内容を解説しますが、ご興味のある方は他の失行・失認等について調べてみてください。

失行

それでは失行について解説していきます。

まず失行とは何のことでしょうか?

簡単にいうと、

運動障害や認知面とは関係なく、運動行為を正常に行うことができない状態のことです。

失行にはいくつか種類があります。それぞれ解説していきます。

  • 肢節運動失行
  • 観念運動失行
  • 観念失行
  • 着衣失行
  • 構成失行

肢節運動失行

簡単な動作やそれに伴う協調運動が正しく行えなくなった状態のことをいいます。
例)ボタンを留めることができない。手袋をつけることができない。 など

観念運動失行

自発的な運動は可能ですが、指示された運動を行えなくなった状態のことをいいます。
例)自分から意識的に歯磨きを行うことができるが、「歯磨きをしてください」の指示に対しては正しい運動を行うことができない。 など

観念失行

使い慣れた道具の使用やそれに伴う一連の動作を正しく行えなくなった状態のことをいいます。
例)ハサミを使って紙を切ることができない。急須でお茶を淹れることができない。 など

着衣失行

衣類を正しく着たり脱いだりすることができなくなった状態のことをいいます。

構成失行

簡単な図形や空間的な構成が困難になった状態のことをいいます。
例)積み木をすることができない。図形の描写をすることができない。 など

今回解説した失行以外にも種類がありますが、今回はここまでにしておきます。

肢節運動失行・観念運動失行・観念失行は似ているため間違えないように注意しましょう。

失認

次に失認について解説していきます。

失認とは、

視覚・聴覚・触覚などの感覚に障害がないにも関わらず、物体や人の顔を認知することができなくなった状態のことです。

  • 物体失認
  • 相貌失認
  • 聴覚性失認
  • 身体部位失認
  • 半側身体失認
  • 病態失認
  • 半側空間無視

失認はたくさんの種類があります。

ここでは全て紹介・解説することはできませんので、この7つに絞って解説していきます。

他の失認についてご興味のある方は調べてみてください。

物体失認

見ただけではその物体が何であるかわからなくなった状態。
視覚以外の感覚(聴覚・触覚・嗅覚・味覚)を使えばその物体が何であるかがわかります。
例)「りんご」を見ても何かわからないが、食べると「りんご」とわかる。

相貌失認

顔を見ただけではその人が誰かわからなくなった状態。
服装や声などの特徴で誰かを判断することはできます。

聴覚性失認

聴覚性失認は、「音を音として認識できない状態」と「聞こえている音が何の音なのかがわからない状態」の2種類があります。
例)「音を音として認識できない状態」→電話の音が鳴っていても反応しない
  「聞こえている音が何の音なのかがわからない状態」→電話の音が鳴っていても何の音かわからない

身体部位失認

体の部位の名前(肩・耳等)を言われたり、触られたりしてもその部位がどこであるか指し示すことができなくなった状態。

半側身体失認

障害された脳と反対側の体に対する注意が低下し、存在しないかのように扱ってしまう状態。
例)半分だけ髭を剃らない、左手だけを全く使おうとしない など

病態失認

麻痺がある状態でも、それを否認してしまう状態。

半側空間無視

視覚的には全体が見えているにも関わらず、障害された脳と反対側の物体に気づくことができなくなった状態。
例)食事を左半分だけ残す、歩いていて左側のものに何度もぶつかる など

おわりに

今回は高次脳機能障害の「失行」「失認」について解説しました。

「失語」については以前解説していますので今回は割愛しております。

もし興味のある方は見ていただけると幸いです。(構音障害と失語症について

高次脳機能障害は様々な症状があり、今回説明しきれていないものもあります。

次回も高次脳機能障害について解説していきます。内容としては「記憶障害」について解説していきます。