はじめに

前回は感覚障害について解説しました。

今回は脳卒中の症状の「構音障害と失語症」について解説します。

構音障害と失語症は一見すると似た症状で違いがわからない方もいらっしゃると思います。

今回は違いも含めて解説していきます。

構音障害と失語症の違い

構音障害

言葉を正しく発音することが困難になっている状態。
聞いた声や文字を読んで理解する能力は保たれています。→上肢の麻痺がない場合は筆談やタイピング等でコミュニケーションをとることができます。

失語症

言葉の理解や、自分の考えを整理できないなどの、言葉をうまく使えなくなる状態。
損傷を受けた脳の部位によって、症状が異なります。

構音障害について

構音障害は原因別に4つに分類されます。

  • 器質性構音障害
  • 運動障害性構音障害
  • 聴覚性構音障害
  • 機能性構音障害

器質性構音障害

唇や舌などの発声に必要な器官の形に異常がある状態。

運動障害性構音障害

脳卒中等により、話すための運動機能に障害されている状態。
脳卒中以外にも、筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病でも生じます。

聴覚性構音障害

聴覚障害により、正しい発音を聞き取れず、正しい発音を学習できないために、発音が障害されている状態。

機能性構音障害

はっきりとした原因がないにも関わらず、正しい発音ができない状態。

失語症について

高次脳機能障害の一種であり、優位半球の障害で出現します。(優位半球:主に左半球と言われています。右半球が優位半球の方もいます。)

つまり、運動麻痺と合わせると、脳卒中で右半身に麻痺が出現している方に失語症は合併しやすいと言うことになります。

失語症の説明の前に言語中枢について紹介します。

言語中枢は大きく分けて2つあります。

ブローカ野

「話す」「書く」などの、主に言語表出を司っています。

ウェルニッケ野

「聞く」「読む」などの、主に言語理解を司っています。

上記以外に言語に関係するものとして2つあります。

①弓状束:ブローカ野とウェルニッケ野を繋いで情報を伝えています。
②角回:視界から入った情報をウェルニッケ野に伝える役割を持っています。

  • 運動性失語:ブローカ野の障害により、発話に障害が生じている状態
  • 感覚性失語:ウェルニッケ野の障害により、言語理解に障害が生じている状態
  • 伝導性失語:基本的な流暢な話し方で、言語理解も保たれていますが、復唱に障害が生じている状態
  • 全失語:発話、言語理解、復唱などのすべての言語機能に障害が生じている状態

運動性失語

言葉の理解はできますが、自分が話したいことを言葉にすることが困難になっている状態です。
非流暢、助詞・助動詞を抜かす、換語困難が主な症状です。

感覚性失語

自分から話すことはできますが、言葉を理解することができない状態です。
流暢、新造語を話す、錯誤、ジャルゴン失語が主な症状です。
ジャルゴン失語:流暢に話すが、錯誤や新造語が多すぎて意味のわからない話になってしまう症状のことです。

おわりに

今回は「構音障害」「失語症」について解説しました。

それぞれ言語障害ではありますが、原因や症状が異なります。

臨床ではどちらの症状なのかを評価し治療を行う必要があります。

言語聴覚士によるリハビリテーションによって、どの程度回復ができるかは重症度等によって変わってきます。

次回は、「摂食・嚥下障害」について解説します。