はじめに

前回「脳の構造と機能」「錐体路」について解説しました。

今回も前回と同様に解剖等の基礎的な解説をさせていただきます。

脳卒中の症状について理解する上で、基礎は重要になってきますので目を通していただければと思います。

今回は下記の流れで解説していきます。

感覚の伝道路

感覚障害の症状は神経の通り道のどこが障害されるかによって、出現パターンが異なります。

それを理解するためには、感覚の神経がどのように脳へ到達するのかを知る必要がありますので、今からは感覚の伝道路について解説します。

上の画像2つをご覧の通り、先ほど紹介した感覚の種類それぞれで、脳への通り道が異なります。

感覚は神経が末梢から脊髄まで到達すると、反対側へその場で交叉する伝道路と、延髄まで上がり交叉する伝道路があります。

その場で交叉する伝道路は、外側脊髄視床路(温痛覚)前脊髄視床路(粗大な触覚)です。

延髄まで上がり交叉する伝道路は、後索を通る伝道路(精密な触覚、意識できる深部感覚)です。

上記伝道路が脊髄を上昇していき、脳幹・視床・大脳皮質へ刺激が伝えています。

このような経路を通るため、脳卒中の場合は運動麻痺と同様に脳が傷害された逆側の感覚障害が出現します。

ですが、脊髄が障害された場合は障害された部位によって症状が異なります。

ここを詳しく解説すると長くなってしまいます。脳卒中の話とかなり脱線してしまうため割愛させていただきます。

脳神経について

脳神経とは、主に脳幹から伸びる末梢神経のことです。頭頸部の運動・感覚・自立神経機能(副交感神経のみ)の役割を持っています。

脳神経脳神経が出るレベル
Ⅰ 嗅神経脳幹より上
Ⅱ 視神経脳幹より上
Ⅲ 動眼神経中脳
Ⅳ 滑車神経中脳
Ⅴ 三叉神経
Ⅵ 外転神経
Ⅶ 顔面神経
Ⅷ 聴神経
Ⅸ 舌咽神経延髄
Ⅹ 迷走神経延髄
Ⅺ 副神経延髄
Ⅻ 舌下神経延髄
※嗅神経・視神経は現在では中枢神経系に分類されていますが、歴史的に脳神経と扱われています。

脳神経は上の画像のように左右12本ずつあり、中脳に2つ、橋に4つ、延髄に4つの脳神経格があります。

Ⅰ 嗅神経

嗅覚を司る感覚神経

Ⅱ 視神経

視覚を司る感覚神経
眼球から入った視覚情報を後頭葉に伝える。

Ⅲ 動眼神経・Ⅳ 滑車神経・Ⅵ 外転神経

3つの神経が協調して眼球運動を司る運動神経
動眼神経は副交感神経(自律神経)の機能として、瞳孔の大きさを調整する機能も持っています。

Ⅴ 三叉神経

顔面の感覚を司る感覚神経・咀嚼筋の運動を司る運動神経
眼神経・上顎神経・下顎神経の三叉になっている。
眼神経と上顎神経が顔面の感覚、下顎神経が舌の前2/3の温痛覚・触覚と咀嚼運動を司っています。

Ⅶ 顔面神経

運動神経感覚神経副交感神経を司っています。
運動神経:表情筋の運動、アブミ骨筋反射
感覚神経:舌の前2/3の味覚、外耳道・鼓膜などの温痛覚
副交感神経:涙・鼻汁・唾液の分泌(唾液は顎下腺・舌下腺より)

Ⅷ 内耳神経

聴覚や平衡感覚を司る感覚神経
蝸牛神経・前庭神経の二つに分かれており、蝸牛神経が聴覚・前庭神経が平衡感覚を司っています。

Ⅸ 舌咽神経

運動神経感覚神経副交感神経を司っています。
運動神経:咽頭の挙上運動
感覚神経:舌の後ろ1/3の味覚、舌の後ろ1/3・咽頭・耳の温痛覚と触覚、咽頭・頸部の内臓感覚
副交感神経:耳下線からの唾液の分泌

Ⅹ 迷走神経

運動神経感覚神経副交感神経を司っています
運動神経:咽頭・喉頭の運動
感覚神経:喉頭の感覚、胸腹部臓器の内臓感覚
副交感神経:胸腹部臓器の運動・分泌調節

Ⅺ 副神経

二つの筋を支配する運動神経
胸鎖乳突筋(頭を反対側に向ける)・僧帽筋(肩の挙上)を司っています。

Ⅻ 舌下神経

舌筋を支配し、舌の運動を司る運動神経

このように、脳神経は12本あり、運動神経・感覚神経・副交感神経と様々な機能を持っています。

脳幹が障害された際にはこのような機能が障害されるということになります。

おわりに

今回は「感覚の伝道路」「脳神経」について解説しました。

感覚の伝道路はその場で反対側に交叉するものと延髄で交叉するものがあります。そのため、不完全な脊髄損傷での感覚障害のパターンは複雑になっています。

今回は脳卒中を理解するための前知識のため、脊髄損傷の場合の感覚障害パターンは割愛しています。もし機会がありましたら解説させていただきます。

脳神経では、主に脳幹から出ている12本(2本は脳幹より上)の神経のことでした。

それぞれ、運動神経・感覚神経・副交感神経が複雑に絡み合いながら、首から上の運動や感覚等を司っています。

脳神経については覚え方や語呂合わせなどありますので、興味のある方は調べてみても良いかもしれません。

次回はようやく「脳卒中の症状」について解説していきます。